2012年4月10日火曜日

遺伝子検査・スクリーニングについて


   はじめに

 近年、私たちは遺伝子に関する疾病の発見、技術の開発など多くのニュースやトピックについて目にするようになった。そして、私たちの想像以上に、遺伝病が私たちの生活に与える影響は大きい可能性がわかってきている。例えば、アメリカ合衆国内の統計によれば、遺伝病による死亡原因は、1歳から4歳までの乳幼児では第2位であり、15歳から17歳の間では第3位である。また病院を訪れたことのある人の中で、18歳以上の成人では約13%の人々が、そして18歳以下では25−30%の人々が遺伝子に関連する疾患による通院であるとの統計がある(1)。さらに、病院等の施設に収容された精神遅滞患者のうち20%以上が、遺伝子に関連する疾患が原因であることがわかっている(2)。また、『ヒトのメンデル型遺伝−常� ��色体優性・常染色体劣性・X連鎖表現型のカタログ−』(Mendelian Inheritance in Man: Catalogs of Autosomal Dominant, Autosomal Recessive, and X-linked Phenotypes 12th edition) 最新版によると、8,587の疾患が、遺伝子や染色体の異常による疾患である(3)

 それら遺伝病を検査、診断する第一に用いられる方法として、遺伝子検査・スクリーニングがある(4)。ヒトゲノムプロジェクトの進展により疾患遺伝子が同定され、また技術革新により容易かつ安価に遺伝子検査が行われるようになりつつある。本稿では、この遺伝子検査についての現在を概観する。最初に、遺伝子検査の対象である遺伝病について述べ、次に遺伝子検査・スクリーニングについて、その定義、方法、ヒトゲノムプロジェクトとの関連、現在のアメリカ合衆国での状況、そして種類について述べる。最後に、遺伝子検査・スクリーニングに起因する倫理問題について考察する。

   1 遺伝病

 遺伝病、あるいは遺伝性疾患(genetic disease, hereditary disease)とは、染色体による異常と遺伝子の異常(単一遺伝子疾患、多因子疾患、体細胞遺伝疾患)による疾患の総称である(5)。ある世代から次世代へと伝達される遺伝情報プロセスは複雑で絡み合っており、遺伝病は、その複雑な伝達プロセス中に生じると考えられている(6)

 染色体あるいは遺伝子の変異による遺伝病は様々な形態がある。図1は染色体の構造異常の各種形態を示す。Aは2個の非相同染色体が切断され、切断部位を交換した形態(相互転座)、Bは染色体の先端部分が切れ消失した形態(端部欠失)、Cは環状になり、はみ出した部分は消失した形態(環状染色体)、Dは染色体の重複部分が染色体内にある形態(重複)、Eは単一腕内で染色体の一部が反転する形態(腕内逆位)、そしてFはそれぞれ短腕部、長腕部どうしで結合した形態(同腕染色体)である。これらの染色体異常の結果、遺伝病が生じる。

Moor,Persaud『人体発生学』瀬口春道監訳(医師薬出版、2001年)
185頁を参考にして改変。

 また遺伝子が原因による遺伝病は変異遺伝子に起因し、親から子どもへ受け継がれる時、あるいは後天的な環境ストレスに対する応答によって生じると考えられている。遺伝子の変異形態も染色体の変異形態と同様に、塩基配列の転座、欠失、重複、逆位などがある。

 変異遺伝子の結果、生体には変成タンパク質や欠陥タンパク質が生産されるか、あるいはタンパク質が全く生産されないことがある(7)。そのタンパク質が生体にとって重要な時に疾病が生じる。つまり、疾病の重篤度は、生体中でのタンパク質の役割度に依存するのである。遺伝子の変異が遺伝病の主因であるが、変異の中には必ずしも疾患が生じない場合がある点は重要である。

 本来、すべての人間には、有害な変異遺伝子があると考えられているが、変異遺伝子が個人に与える影響は、次に挙げるいくつかの要因が関わっている(8)

  1.疾患の遺伝形式
   a. 常染色体性優性遺伝
   b. 常染色体性劣性遺伝
   c. 性染色体性X連鎖遺伝

  2.疾患の浸透度(9)

  3.疾患の原因
   a. 単一遺伝子疾患
   b. 多遺伝子疾患
   c. 多因性遺伝子疾患

 図2は代表的な遺伝形式を示している。図を理解するために、染色体および遺伝子に関する主な概念について簡単に説明する。

 染色体上の遺伝子の占める位置は座位(locus)と呼ばれる。特定の形質を支配する遺伝子がどの位置にあるのかは一定しており、体細胞内の染色体はすべて対をなし、遺伝子の座位もまた対になっている。この同一の座位を占める遺伝子は特に対立遺伝子(allele)と呼ばれ、それぞれ父親と母親に由来する。

 この一つの座位に関する対立遺伝子としてAとaが存在するとすれば、この座位については AA、Aa、aa という3つの遺伝子型が考えられ、それぞれの遺伝子型に対応する形質の発現を表現型という(10)。この3種類のうち、AA と aa はそれぞれ等しい二つの対立遺伝子の組み合わせで、このような遺伝子型を持つ個体をホモ(同型)接合体と呼び、また遺伝子型 Aa の場合をヘテロ(異型)接合体と呼ぶ。

 図2では、特定の座位を占める正常遺伝子を常染色体ではA、性染色体ではX、変異遺伝子を常染色体ではa、性染色体ではxで表わす。網かけは遺伝子疾患のある個体を表す。

 1は常染色体性優性遺伝で、AA(ホモ)は正常であり、Aa(ヘテロ)が病気として表現される。常染色体性優性遺伝疾患の患者は、一つの変異遺伝子により影響され、変異遺伝子のある人は、当該遺伝子を50%の確率で子どもに遺伝することになる。2は常染色体性劣性遺伝で、外見上全く正常な両親(Aa)から25%の確率で遺伝子疾患患者になる。常染色体性劣性遺伝疾患の患者は、二つの同じ変異遺伝子を持つことにより発症する。当該変異遺伝子が一つの時には、正常遺伝子が優位であるので発症はしない。正常遺伝子と変異遺伝子を持つ人のことを保因者(carrier)と言う。3はX連鎖性遺伝であり、X連鎖性遺伝疾患の変異遺伝子は、X染色体から受け継がれる。多くのX連鎖性疾患は劣性遺伝であリ、X連鎖性遺伝子疾患は、 普通は男子だけに発症する。なぜなら、男子はXとYの性染色体を持つが、父親からはY染色体が受け継がれるので、母親から遺伝したX染色体の変異遺伝子(x)を補うことができないからである。


高齢者のものです

 さて単一遺伝子疾患、多遺伝子疾患、あるいは多因性遺伝子疾患は大変複雑であり、私たちを混乱させる原因の一つになっている。この点は、遺伝子検査・スクリーニングに関する多くの倫理問題を生じる原因として考えられるので、ここでは、第3カテゴリーの疾患の原因について補足説明する。

 単一遺伝子疾患では、DNA(11) 配列の小さな変化が重篤な疾患に結びつくとされる。どちらかの親または両親から受け継いだ一つの変異遺伝子により、約4,000の疾患が生じていると考えられているが、これらの疾患はとても希な疾患であり、全疾患の約3%に過ぎないとされている(12)

 その中でもいくつかの単一遺伝子疾患は、ある特定の民族内での発症頻度が高いことが明らかになっている。例えば、単一遺伝子が同定されている遺伝病のうち、鎌形赤血球貧血症 (Sickle cell anemia)(13) はアフリカ系アメリカ人やヒスパニックでの発症率が高く、嚢胞性繊維症 (Cystic fibrosis)(14) はヨーロッパ系白色人種、テイ−サックス症 (Tay-Sachs disease)(15) はアシュケナージ系ユダヤ人での発症率が高いことがよく知られている。

 多遺伝子疾患とは、一個以上の複数の変異遺伝子が関わり発症する遺伝子疾患である。多遺伝子疾患が複雑な理由は、複数の遺伝子が関連して発症する遺伝病であるが、疾患遺伝子の関係、つまり、どの遺伝子がどの程度疾患に関係するのかなどについて複雑であり、未だ不明な点が多いからである。

 多因性遺伝子疾患とは、変異遺伝子が疾患の発症危険度を高めるが、実際の疾患の発症には、食餌、運動、喫煙、ストレスなどの環境要因など、遺伝子以外の外的要因に大きく影響される疾患のことである(16)。心臓疾患、肥満、高血圧、各種ガン、アルツハイマー病、精神分裂病、そう鬱病などは、多因性遺伝子疾患に含まれる。多因性遺伝子疾患が複雑な理由は、疾患の発症原因が遺伝子要因と環境要因であることに加え、変異した遺伝子が必ずしも常に疾患の発症に関係するとは限らないことである。つまり、変異遺伝子が発症に影響することもあれば、変異しているだけでほとんど影響が無いこともある。遺伝子要因と環境などの外的要因が疾病にどれほどの影響を及ぼすのかについて、また遺伝子要因の影響の有無 については、未だ明らかでないのが現状である。

   2 遺伝子検査・スクリーニング

(1) 定義と目的

 遺伝子検査に関する米国国立衛生研究所/米国エネルギー省(NIH/DOE)の特別委員会は、遺伝子検査を次のように定義している。遺伝子検査とは、「臨床目的で、遺伝性疾患に関連する遺伝子型(genotype)、変異、表現型(phenotype)、核型を検査するために行う、ヒトDNA、RNA(17)、染色体、タンパク質、特定の代謝産物の分析」である(18)

 厳密には、遺伝子検査とは遺伝子検査と遺伝子スクリーニングに分類できる。遺伝子検査は、「個人に対して行われ、一つか複数の遺伝子特性の有無に関する診断手続き、あるいは決定」に使用される検査と定義される(19)。一方、遺伝子スクリーニングは、次に該当する遺伝子型を持つ集団を対象とした検査である。その集団とは、(1)既に疾患と関連しているか、あるいは疾患に対する素因があると判明している遺伝子型を有する人々、(2)疾患が子孫に遺伝する可能性がある遺伝子型を有する人々、または(3)疾患に関連するか否かは分からない変異(variation)をつくる遺伝子型を有する人々の集団である(20)

 遺伝子検査・スクリーニングは、予防レヴェルと、診断レヴェルで有用であると考えられている。予防レヴェルでは、特定疾患の原因となる遺伝子を発見し同定することにより、将来生じる可能性のある状況を予想することができ、また効果的な治療方法の選択に用いることもできると考えられている。正確な情報を提供する遺伝子検査は、私たちの健康と福祉、また食餌、運動パターン、生活環境などを含んだライフスタイルの改善に貢献し得る(21)

 診断レヴェルでは、特定遺伝子の同定により、早期段階で疾患関連傾向のある遺伝子に関する情報を提供することができるという利点がある。また現段階では発症の危険度が低いと考えられている病気についても、より早急な診断ができるようになる(22)

(2) 方法

 遺伝子検査・スクリーニングでは、変異した遺伝子配列を見つけ出すため、血液を含め、人体組織から採取された患者のDNAサンプルを精査する。検査対象の遺伝子によって様々な遺伝子検査方法があるが、ここでは現在最も幅広く用いられているポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)を用いた遺伝子検査法について説明する。PCR は、DNA 試料から目的とする特定領域の DNA を数時間で数十万倍に増幅させる方法である。これはDNA ポリメラーゼ(酵素)が一本鎖 DNA を鋳型として相補鎖を作っていく性質を利用しており、現代の遺伝子工学を支える最も基本的かつ重要な技術の一つである。PCR によって増幅された DNA 試料を用い、例えば自動 DNA シークエンサーを使用し塩基配列を確認する方法などがよく用いられている(23)

 遺伝子検査・スクリーニングを行うためには、特定疾病に関連する遺伝子を見つけ出す必要があり、そのために研究者たちは、DNAの30億塩基対の中から遺伝子変異を探し出さなければならない。これは、ハンチントン舞踏病や嚢胞性繊維症の遺伝子を見つけるために、10年の歳月を要したことからも想像できるように、大変に複雑で困難な研究である(24)。しかし、ヒトゲノムプロジェクトにより次第に明らかにされてきた遺伝子地図と遺伝子配列は、当該遺伝子を探し出す作業にとって、大変に有意義な資源となっている。ヒトゲノムプロジェクトの最大の恩恵を享受するのは遺伝子検査である、と述べている科学者もあり、ヒトゲノムプロジェクトの進展により、今後遺伝子と疾患の関係の解明が進み、多くの遺伝子検査� �スクリーニングが可能になるだろう(25)

(3) 遺伝子検査・スクリーニングとヒトゲノムプロジェクト


どのようにお口の中で電話の歯数のグラフに

 ヒトゲノムプロジェクト(Human Genome Project)とは、米国国立衛生研究所と米国エネルギー省のゲノム研究について、国家科学アカデミーの学術研究評議会(National Research Council of the NationalAcademy of Science)と米議会技術評価局(Office of Technology Assessment)が計画を提案し、アメリカ議会が資金提供したプロジェクトで、1988年に開始された(26)。ヒトゲノムプロジェクトは、国立衛生研究所と米国エネルギー省、全米科学財団などの連邦機関と、ハワード・ヒューズ(Howard Hughes)医学研究所など民間機関の双方の支援の下で行われた。

 当初は、15年間で30億ドルを費やし、ヒト遺伝子染色体地図の作成および遺伝子配列の決定を行い、2005年までに、当時は約10万個と見積もられていたヒト遺伝子と30億塩基対から構成される全長約2メートルのヒトDNA分子の解読を完了する計画であった(27)

 1992年4月まで米国国立衛生研究所のヒトゲノム研究センターのディレクターを努めたジェームス・ワトソン(James Watson)によれば、ヒトゲノムプロジェクトの目的とは、1全遺伝子の染色体地図の位置を同定すること、2全遺伝子配列を決定すること、3世界中の科学者にゲノム情報を提供すること、4ゲノム情報を適切に使用するために、倫理的な保護策を設けることだった(28)

 2000年6月26日にホワイトハウスでビル・クリントン(Bill Clinton)アメリカ合衆国大統領とトニー・ブレア(Tony Blair)イギリス首相は、国際ヒトゲノムプロジェクトとバイオベンチャーのセレラジェノミックス社が、ヒトゲノム配列の概要版(ラフドラフト)の作成を完了したと発表した。ヒトゲノム解析の主要な役割を果たした国際ヒトゲノムプロジェクトのフランシス・コリンズ(Francis Collins)(国立衛生研究所ヒトゲノム研究センター・ディレクター)とクレイグ・ヴェンター(Craig Venter)(セレラジェノミックス社最高経営責任者)も同席し、この歴史的瞬間を祝った(29)。高精度のヒトゲノム配列は、2003年までに完了される予定であり、これは当初の目標より2年も早い(30)

 コリンズは、ヒトゲノムプロジェクトを開始した当時、「ヒトゲノムプロジェクトは少なくとも次の100年間の研究計画を活性化する情報の宝庫である」と述べた(31)。ヒトゲノムプロジェクトは、中でも医科学分野に対する恩恵が最も大きいと考えられ、特定遺伝子配列の同定により、遺伝子と疾病の関係が解明され、複雑な疾病に関する研究の進展に大きく貢献すると期待された。また、遺伝子配列の決定は、特別な希少疾患だけでなく、例えば心臓血管疾患や各種ガンなどの一般的な疾患の易罹患性(かかりやすさ)と遺伝子の関係についての医学情報の提供も期待された(32)

(4) 遺伝子検査・スクリーニングの現在

 全米では、遺伝子疾患、染色体疾患、遺伝子疾患傾向性の遺伝子検査が、500以上の大学、研究機関などで行われている(33)。また遺伝子疾患や遺伝子の状態を調べる300以上の遺伝子検査が病院などの臨床医療機関で行われており、新たに325もの遺伝子疾患や遺伝子の状態を検出可能にする遺伝子検査の研究が進められている。下記の表は、1996年までにアメリカのニューヨーク州で承認された臨床遺伝子研究施設で利用できる遺伝子検査の一覧である(34)

 遺伝子検査を実施している研究機関に関する調査によれば、1994年から1996年までに行われた遺伝子検査数は、少なくとも年々30%ずつ増加しており、1994年には全米で97,518であった遺伝子検査総数が、1996年には175,314にまで増加した(35)。このように遺伝子検査が、臨床現場に広く浸透していることが分かる。

遺伝子検査リスト(1996年:アメリカ・ニューヨーク州)


コントラストの甲状腺の取り込みスキャンはどのように行われますか?
検査対象疾患検査名:疾患症状
α1-アンチトリプシン欠乏症AAT:気腫、肝臓疾患
筋萎縮性側索硬化症ALS:ルーゲーリック病;進行性運動機能消失
アルツハイマー病*APOE:老人性痴呆症
毛細管拡張性失調症AT:筋制御の消失、ガンによる進行性脳疾患
ゴーシェ病GD:肝脾の腫脹、骨格変性
遺伝性乳ガン、卵巣ガン*BRCA 1 および 2:若年性胸腺、卵巣の腫瘍
遺伝性大腸ガンCA:若年性の大腸あるいは他臓器の腫瘍
シャルコー・マリー・トゥース病*CMT:四肢末端の感覚麻痺
(神経性進行性筋萎縮症)
先天性副腎皮質過形成CAH:ホルモン欠損;両義の性器、男性仮性半陰陽
(胎生初期における生殖原基の発育不全により、外観上性別が不明となる状態)
嚢胞性繊維症CF:濃厚粘液分泌の蓄積と慢性感染の結果生じる肺と脾臓の疾患
デュシューヌ筋ジストロフィー/ベッカー筋ジストロフィーDMD:筋の消耗、萎縮、あるいは虚弱
筋緊張症DYT:筋の緊張、反復捻転運動
ファンコニ貧血症(Cグループ)FA:貧血、白血病、骨格変性
ライデン第5因子FVL:出血疾患
脆弱性X症候群FRAX:遺伝性精神遅滞の主要原因
血友病A型およびB型HEMA および HEMB:出血性疾患
ハンチントン舞踏病HD:中年期に発症;進行性、致死性、退行性の神経疾患
筋硬直症MD:進行性筋虚弱;最も多い成人筋変性の型
神経繊維腫症I型NF1:多発性良性神経システム腫瘍;ガン
フェニルケトン尿症PKU:酵素欠損による進行性精神遅滞;食餌療法可能
成人性多嚢胞腎疾患APKD:腎臓機能不全と肝臓疾患
プラダー・ウィリ/アンゲルマン症候群PW/A:運動機能低下、精神遅滞、早死
鎌形赤血球貧血症SS:血液性疾患;慢性的な痛みと感染
脊髄小脳失調症I型SCA1:不随意性筋運動、反射疾患、爆発性言語
脊髄筋萎縮SMA:普通は、子どもの致死的進行性の筋消耗疾患
地中海貧血症THAL:貧血(赤血球細胞レベルの減少)
ティ−サックス症TS:胎児の神経性疾患;てんかん発作、麻痺

*印は、易罹患性検査である。

(5) 種類


 遺伝子検査は、人生のどの時期に行われるかにより、次の四つに分類することができる。その時期とは�br/> (10) 遺伝子型とは、生物の遺伝的基礎をなす遺伝子構成を指し、その特性を遺伝的に決定する。また遺伝子型と対置される表現型とは、生物の示す形態的、生理的な性質をいうが、単位形質やその集合がどのような型で発現されるか、その型を指す。一定の環境下では、表現型は生物の持つ遺伝子型に規定される。しかし、遺伝子型が同じ集団にあっても、表現型が一致しないこともあり、また環境条件の変化により表現型が変化する場合がある。したがって、表現型が同じであることは遺伝子型が等しいことを意味しない。『生物学辞典』第4版(岩波書店、1996年)参照。
(11) DNAはデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)のことであり、四つの塩基:アデニン(adenine (A))、チミン(thymine (T))、グアニン(guanine (G))、シトシン(cytosine (C))から構成される。
(12) Denise Casey, "What Can the New Gene Tests Tell Us?" The Judge's Journal of American Bar 36.3 (Summer 1997). この論文は、次のウェブサイトで参照できる。〈
(13) 鎌形赤血球貧血症は、赤血球内でヘモグロビンSが重合し、連鎖することによって鎌状の赤血球を形成し、慢性溶血性貧血と血流障害に基づいて生じる、各臓器の慢性的機能障害、微小血管閉塞による疼痛発作、骨髄低形成発症および、溶血発症を生じる疾患である。『南山堂 医学大辞典』第18版限定版(南山堂、2001年)を参照。
(14) 嚢胞性繊維症は、北ヨーロッパ、中央ヨーロッパを起源とする白色人種に最もよく見られる遺伝病で、第7番染色体上の劣性突然変異遺伝子により引き起こされる。肺や膵臓に影響を与え、その結果慢性肺疾患になる可能性が高い。膵臓酵素の欠損により、正常の消化機能が妨げられる。
(15) テイ−サックス症は、へキソサミニダーゼAの欠損による遺伝病であり、ガングリオキシド GM2 という糖脂質が脳細胞に蓄積することによって起こる神経疾患である。発育遅滞、麻痺、知能低下、失明などの症状を引き起こす。アシュケナージ系ユダヤ人以外に、カナダ・ケベック州東部のフランス系住民に、この疾患の遺伝子保持者の率が高いという報告がある。前掲書『遺伝学用語辞典』参照。
(16) British Medical Association 34.
(17) リボ核酸(Ribonucleic acid)のこと。ヌクレオチド鎖の総称であり、構造の特徴としては糖成分としてリボースを含むことと、また核酸塩基としてDNAではチミンなのがRNAではウラシル(uracil)を含むことである。RNAに� 概要版のヒトゲノム解読の結果、国際ヒトゲノムプロジェクトの解析で、ヒトの総遺伝子数は、約32,000個、セレラジェノミックス社の解析では、26,000から39,000個とされた。これは、当初予想された遺伝子総数と比較し少なすぎるのではないかとの指摘もあった。2001年12月19日に、国際ヒトゲノムプロジェクトの、イギリス・ウェルカムトラスト・サンガー研究所による、ヒト第20番染色体の精密な遺伝子配列の完全解読が完了した。その結果、第20番染色体上に特定された遺伝子数が727個と少なかったために、少な目の遺伝子総数を裏付ける有力� ��証拠になった。『日本経済新聞』(2001年12月20日朝刊)38面を参照。
(31) Francis S. Collins, "The Genome Project and Human Health, FASEB Journal 5 (1991): 77.
(32) Sharon J. Durfy, "Ethics and the Human Genome Project," Archives of Pathology and Laboratory Medicine 117 (1993): 466-9.
(33) Holtzman and Watson 7.
(34) Clarisa Long, "Introduction," Genetic Testing and the Use of Information ed. Clarisa Long (Washington, DC: AEI Press, 1999) 7-9. 次のウェブサイトで参照可能。Casey 〈
(35) Secretary's Advisory Committee on Genetic Testing Notice of Meeting and Request for Public Comments on Oversight of Genetic Testing, Federal Register December 1, 1999 (64 FR 67273) 10 Mar. 2000 アクセス。〈
(36) Walters 220.
(37) 様々な分類の仕方がされているが、さらに分類され特定名称が与えられている時には、各項目ごとに補足説明する。
(38) Royal College of Physicians, Prenatal Diagnosis and Genetic Screening: Community and Service Implications (1989) 1.
(39) 前掲書『遺伝学用語辞典』416ページを参照。
(40) U.S. President's Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and Biomedical and Behavioral Research, Screening and Counseling for Genetic Conditions: A Report on Screening, Counseling, and Education Programs (Washington, DC: USGPO, 1983) 23.
(41) 羊水穿刺、絨毛膜絨毛標本採取以外に、超音波診断、胎児鏡検査法、臍帯血採取などがある。British Medical Association 40-2 を参照。さらに詳細な出生前診断の方法については、Moore, Persaud『人体発生学』第6版、瀬口春道監訳、(医歯薬出版、2001年)123−127ページを参照せよ。
(42) GE Palomak, GJ Knight, JE McCarthy, JE Haddow and JM Donhowe, "Maternal Serum Screening for Down Syndrome in the United States: A 1995 Survey," American Journal of Obstetrics and Gynecology 176 (1997): 1046-51.
(43) Institute of Medicine, Committee on Assessing Genetic Risks, Assessing Genetic Risks: Implications for Health and Social Policy eds. Lori B. Andrews, et al. (Washington, DC: National Academy Press, 1994) 75.
(44) American Fertility Society, Ethics Committee, "Ethical Considerations of the New Reproductive Technologies, Fertil Steril 62 (Suppl. 1) (1994): i-125S.
(45) Institute of Medicine, Committee on Assessing Genetic Risks 82.
(46) Sherman Elias, "Preimplantation Genetic Diagnosis by Comparative Genomic Hybridization," NEJM 345.21 (2001): 1569-71.
(47) British Medical Association 41.
(48) フェニルケトン尿症とは、ヒトのアミノ酸代謝に関する遺伝性疾患であり、アミノ酸の一種であるフェニルアラニンをチロシンに分解する酵素がないことが原因とされ、その結果、脳機能障害が生じる。この機能障害を回避するためには、出生後の初期段階でのフェニルアラニンの食餌制限が必要である。約1万人に1人の確率で生じる。
(49) U.S. President's Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and Biomedical and Behavioral Research 13. Alexander M. Capron, "Which Ills to Bear?: Reevaluating the "Threat" of Modern Genetics," Emory Law Journal 39 (1990): 678-82, 684-96.
(50) Institute of Medicine, Committee on Assessing Genetic Risks 68-9.
(51) Elaine H. Hiller, Gretchen Landenburger, and Marvin R Natowicz, "Public Participation in Medical Policy-Making and the Status of Consumer Autonomy: The Example of Newborn-screening Programs in the United States," American Journal of Public Health 87 (1997): 1280-88.
(52) US President's Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and Biomedical and Behavioral Research 17-23.
(53) Capron 678-82, 684-96.

(54) US President's Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and Biomedical and Behavioral Research および US Congress, Office of Technology Assessment, Cystic Fibrosis and DNA Tests: Implications of Carrier Screening OTA-BA532. (Washington, DC: USGPO, 1992)を参照。
(55) Francis Collins, "Cystic Fibrosis: Molecular Biology and Therapeutic Implications," Science 256 (1992): 774-9. Institute of Medicine 73-4.
(56) 発症前検査と予測的検査は、検査対象になる遺伝子の浸透度によって区別される。発症前検査は浸透度が高く、予測的検査は浸透度が低い。予測的検査はまた、感受性検査、多因子遺伝子検査、易罹患性検査とも呼ばれる。
(57) H. Gilbert Welch and Wylie Burke, "Uncertainties in Genetic Testing for Chronic Disease," JAMA 280 (1998): 1525-7.
(58) Huntington Disease Collaborative Research Group, "A Novel Gene Containing a Trinucleotide Repeat That is Expanded and Unstable on Huntington's Disease Chromosomes," Cell 72 (1993): 971-83.
(59) American Society of Clinical Oncology, "Statement of the American Society of Clinical Oncology: Genetic Testing for Cancer Susceptibility," Journal of Clinical Oncology 14 (1996): 1730-6.
(60) Yoshio Miki, Jeff Swensen, Donna Shattuck-Eldens, P. Andrew. Futreal, et al., "A Strong Candidate for the Breast and Ovarian Cancer Susceptibility Gene BRCA1, Science 266 (1994): 66-71.
(61) D.F. Easton, D.T. Bishop, D. Ford. et al., "Genetic Linkage Analysis in Familial Breast and Ovarian Cancer: Results from 214 Families," American Journal of Human Genetics 52 (1993): 678-701.
(62) American Society of Human Genetics, "Statement of the American Society of Human Genetics on Genetic Testing for Breast and Ovarian Cancer Predisposition," American Journal of Human Genetics 55 (1994): i-iv.
(63) Caryn Lerman, et al., "BRCA1 Testing in Families with Hereditary Breast-Ovarian Cancer: A Prospective Study of Patient Decision Making and Outcomes," JAMA 275 (1996): 1885-92.
(64) Lisa S. Parker and Rachel Ankeny Majeske, "Standards of Care and Ethical Concerns in Genetic Testing and Screening," Clinical Obstetrics and Gynecology 39 (1996): 873-84.
(65) Thomas H. Murray and Jeffrey R. Botkin, "Genetic Testing and Screening: Ethical Issues," Encyclopedia of Bioethics, revised edition. (New York: Simon & Schuster Macmillan, 1995) 1007.
(66) Walters 225-6.
(67) US President's Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and Biomedical and Behavioral Research を参照。なお、日本語訳は、丸山英二「遺伝子検査における守秘義務と第三者警告義務」『科学技術振興調整費:平成11年度調査研究報告書』 〈
(68) Rarry Gostin, "Genetic Discrimination: the Use of Genetically Based Diagnostic and Prognostic Tests by Employers and Insurers," American Journal of Law and Medicine 17.1-2 (1991): 109-44.
(69) Walters 226.
(70) Murray and Botkin 1007.
(71) Ellen Wright Clayon, "Screening and Treatment of Newborns," Houston Law Review 29.1 (1992): 85-148.
(72) 厳密には、雇用申し込み者に対して雇用者が要求する遺伝子診断検査は、強制的な遺伝子検査は強制にはならない。なぜならば、雇用条件として強制的に検査を要求する会社への申し込みを止める自由が確保されているからである。しかし雇用申し込み者にとっては、必ず受けなけばならない強制的なプログラムと言える。ウォルターズは、このようなスクリーニングプログラムを「条件つき強制」(contingently mandatory)と呼んでいる。詳しくは前掲書 Walters 224を参照せよ。また同様な状況は、健康保険の申込み者に対して、保険証書の作成前に健康保険会社が遺伝子検査を行うことを義務付ける時に生じるであろう。次を参照せよ。Institute of Medicine, Committee on Assessing Genetic Risks, 271-3, 281-2.
(73) US President's Commission 51.
(74) Ruth R. Faden, Neil A. Hotzman, and Judith A. Chwalow, "Parental Rights, Child Welfare, and Public Health: The Case of PKU Screening," American Journal of Public Health 72.12 (1982): 1396-1400.
(75) Murray and Botkin 1009.
(76) Neil A. Holtzman, et al., "Effect of Informed Parental Consent on Mother's Knowledge of Newborn Screening," Pediatrics 72.6 (1983): 807-12.
(77) Ruth Faden, et al., "A Survey to Evaluate Parental Consent as Public Policy for Neonatal Screening," American Journal of Public Health 72 (1982): 1347-52.
(78) George J. Annas, "Mandatory PKU Screening: The Other Side of the Looking Glass," American Journal of Public Health 72.12 (1982): 1401-03.
(79) US President's Commission 55.
(80) Mark I. Evans, Mordecai Hallak, and Mark P. Johnson, "Prenatal Diagnosis," Encyclopedia of Bioethics 989.
(81) 森岡正博は、「五体満足な子どもが欲しい」という思いを、「内なる優生思想」と呼んでいる。さらに森岡は、女性の権利としての人工妊娠中絶とこの「内なる優生思想」について論じている。詳しくは、森岡正博「生殖技術とフェミニズム─優生保護法と内なる優生思想─」『日本の科学と文明─縄文から現代まで─』伊東俊太郎編(同成社、2000年)を参照せよ。
(82) Murray and Botkin 1009.
(83) 米本昌平「遺伝情報と社会」「岐阜を考える」1999年記念号(岐阜県産業経済研究センター)〈
(84) Thomas H. Murray, "The Human Genome Project and Genetic Testing: Ethical Implications," The Genome, Ethics and the Law: Issues on Genetic Testing, A Report of a Conference on the Ethical and Legal Implications of Genetic Testing (Washington, DC: American Association for the Advancement of Science, 1991) 49y-78.

遺伝子検査および遺伝子に関する倫理的問題を扱った日本語の参考文献

青野由利『遺伝子問題とは何か─ヒトゲノム計画から人間を問い直す─』新曜社、2000年
加藤一郎、高久史麿編『遺伝子をめぐる諸問題─倫理的・法的・社会的側面から─』日本評論社、1996年
金城清子『生命誕生をめぐるバイオエシックス─生命倫理と法─』日本評論社、1998年
佐藤孝道『出生前診断─いのちの品質管理への警鐘─』有斐閣、1999年
森岡正博「生殖技術とフェミニズム─優生保護法と内なる優生思想─」『日本の科学と文明─縄文から現代まで─』伊東俊太郎編 同成社、2000年
米本昌平他『優生学と人間社会』講談社現代新書、2000年



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